豚と違って、アルコールに対する考え方は、より緩やかです。これはアルコールを禁止するアッラーの啓示が3段階に下されたことと関連しています。つまりアルコールを禁止するクルアーンの章句は、最初はお酒の良いところも認めながらの緩やかな禁止(QS. Al-Baqarah[2] :219)、2回目はお酒を飲んでいるときには礼拝をしてはいけないという禁止(QS.An-Nisa[4]:43)、そして3回目が完全な禁止(QS.Al-Maidah[5]:91)です。ということで、一部のムスリムは、酩酊しなければお酒を飲んでも大丈夫だと考えています。 (1)緩やかな禁止 雌牛章(Al-Baqarah [2]-219)「かれらは酒と、賭矢に就いてあなたに問うであろう。言ってやるがいい。「それらは大きな罪であるが、人間のために(多少の)益もある。だがその罪は、益よりも大である。」」(2)お酒を飲んでいる時は礼拝をしてはいけないという禁止婦人章(An-Nisa[4]:43)「信仰する者よ、あなたがたが酔った時は、自分の言うことが理解出来るようになるまで、礼拝に近付いてはならない。また大汚の時も、旅路にある者を除き、全身を沐浴した後でなければならない。」(3)完全な禁止食卓章(A-Maidah [5]:91)「悪魔の望むところは、酒と賭矢によってあなたがたの間に、敵意と憎悪を起こさせ、あなたがたがアッラーを念じ礼拝を捧げるのを妨げようとすることである。それでもあなたがたは慎しまないのか。」 ちなみに2回目はお酒を飲んで呂律が回らなくなっていた信者を見た時に、そして3回目はお酒を飲んで理性を失って殴り合いの喧嘩をしていた信者を目にして下された啓示とされています。そうしたことから、最初はお酒の良いところも認められていたこと、その後明らかな理由のある状況での禁止であったことから、酩酊して理性を失うことさえしなければ多少の飲酒は許されているのだと解釈をする信者もいます。しかし、国の法律で飲酒を禁止している国もあります。ブルネイ、サウジアラビアなどのイスラムを国教とする国では、アルコールの持ち込みが禁止されています。外国人もお酒を持ち込むことが禁止されていて、もし持ち込もうとすると酒類は空港で没収されます。マレーシアもイスラムを国教とする国で、ムスリムがお酒を販売すると処罰されますが、ムスリム以外の国民にはそのような制限はありません。ということで、酒類の販売やムスリムの飲酒を禁止している国も一部ありますが、多くの国ではお酒の販売や飲酒をすることが禁止されているわけではありませんし、イスラム諸国にアルコールを飲む人がいないわけではありません。しかし、1970年代末以降、イスラム諸国でイスラム復興現象が現れてきたのを背景に、イスラム的に生きることこそが良いとされる社会的風潮が強まっていて、人前で飲むと陰口を叩かれることもあり、人前で飲む人は激減している印象です。