教義を厳格に解釈するムスリムは、「アルコール成分(*)」がわずか一滴でも入っていれば、「ハラム(禁忌)」と考えるため、一切口にしません。豚由来の成分、ハラールと畜されていない鶏肉や牛肉のエキスが入っていても同様です。一方、教義を緩やかに解釈し、酩酊しなければビールやワインなども多少は飲んでも構わない、あるいは「ポークエキス」は 「(豚)肉」ではないので料理に入っていても問題はないと考えるというムスリムもいます。つまり、彼らにとってはビールもポークエキスも「ハラール」となります。そこで、実際にムスリムを接客する場面においては、ムスリムだからハラール肉以外は一切食べられないなどと勝手に決めつけることなく、本人の意思を確認し、要望があれば普通の肉を使用した料理も提供するといった対応も含め、個々人のニーズに合わせた「ムスリム対応」をすることが重要です。*「アルコール成分」については、誤解されがちですが、現代の国際的なハラール認証機関の基準に従えば、一般的にハムル(お酒)のみを「不浄(ナジス)」で「ハラム」であるとしています。ハムルではない、工業用エタノール(発酵アルコールと合成アルコール)はナジスとはされず、一定の制限の下で使用することは「ハラール」とされています。「Q アルコールは全て禁止されているのですか?」を参照してください。個人レベルの「ハラール基準」とハラール認証団体の定める「ハラール基準」は異なります。個人レベルの「ハラール基準」は非常に多様で、緩やかな人も多いですが、ハラール認証団体の定める「ハラール基準」は、ほとんどの人たちに受け入れられるよう、非常に慎重で厳しいレベルに定められています。また日本の場合、国レベルで「ハラール基準」を定めて管理しているイスラム諸国などとは異なり、さまざまな地域や国の出身者が運営するハラール認証団体がそれぞれの「ハラール基準」を定めて適用しています。ですからハラール認証団体ごとに「ハラール基準」が異なっています。厳しい基準を適用しているハラール認証団体ももちろんありますが、厳しくなければハラールでないということではなく、イスラム法の原則を満たしていればハラールです。以下、イスラム法の原則に従いながらも日本の現状に合った基本的(ベーシック)なレベルのキッチンの使い方を紹介いたします。(現在、国内向けハラール・サービスに統一された基準はまだありませんが、以下の情報は、国内のいくつかのハラール認証団体の方々、イスラム学者の方々からの情報に基づくものです。)