シンガポールのような国では、ハラール食器専用の返却台があり、食器を区別していますが、日本ではムスリムの数が圧倒的に少ないため、そのようなことは現実的ではありません。実際のところ、日本で生活するムスリムたちは、ファミリーレストランに入って普通に食事もとりますし、宿泊先のホテルでビュッフェ形式の食事をとり、同じ食器を使って食事をしています。ハラール・メニューにはハラール専用の食器の使用を義務付けるハラール認証団体もありますが、食洗機を使用して高温で洗浄すれば良いという考え方のムスリムがほとんどのようです。また、イスラム法的には、真正ハディースを根拠として、視覚、嗅覚、味覚できれいになっていることが確認できれば、使用できるとされているとのことです。イスラム法学によれば、犬の唾液が触れた食器は、7回洗浄しなければならず、そのうち1回は土か砂を用いる(もしくは粘土の成分が入った洗剤を使用する)ことが必要とされています。しかし豚については法学派によって見解が異なります。イスラムには四大法学派がありますが、そのうちの一つで東南アジア地域に影響力のあるシャフィーイー派は、豚も犬と同じように土の成分が入った洗剤を使用することが必要と考えます。しかしその他の3つの法学派はその限りではなく、豚が載せられたお皿を、わざわざ土の成分の入った洗剤を使用して洗う必要などなく、水で3回洗浄すれば十分とされているそうです。ちなみにインドネシア、マレーシアでは豚肉も犬と同じように土の成分の入った洗剤を使わないといけないと考えている人もますが、日本での普段の生活では、彼らは豚肉メニューも扱うファミレス、ホテルのビュッフェなどでも食事をしています。ただし、粘土の成分を含んだハラール洗剤を旅行に持ち歩いて自分の部屋で使っていたという神経質なシンガポーリアンの友人もいました。